(意見箱) 「ゆとり教育の見直し」論に思う 更改 05-03-25
 昨年12月、国際的な子供の学力調査の結果が発表され、15才の中学生の場合で、読解力が前回の8位から14位に落ち、数学の応用力が1位から6位に落ちたとか(OECD調査の場合)、理科では4位から6位に落ちた(国際到達度評価学会IEA調査の場合)などと報じられていました。このデータを基にして今度のN文科相は、「子供の学力低下ははっきりした。世界的トップの座を取戻す為に、子供の中にもっと「仲間と競い合う心」を育てる指導を取入れなければならない。取敢えず適切な対策を考える為に全国一律な学力テストを再び実施するとか、おそらく学力低下の原因は「ゆとり教育の導入」であろうから、これを見直さなければならないとして、中教審にこの問題の見直し審議を諮問したそうです。
 私は教育には門外漢ですが、緒に着いたばかりの「ゆとり教育」に今揺さ振りを掛けるのは時期尚早だと思う一人です。理由は二つあります。一つは、問題の公表データをよく読んでみると、読解力で8位から14位に落ちたというのは、点数にして522から498への変化(4.5%低下)でしかありません。この読解力での第1位は546(フィンランド)から543(フィンランド、0.5%低下)になっています。又、数学の応用力が1位から6位に落ちたというのは、557から534への変化(4.2%低下)だったということであり、この数学での第1位は557(日本)から550(ホンコン、1.3%低下)になっています。受験した子供のレベルの分布が同じだとすれば、確かに両教科共順位は下がったと納得出来ますが、年度が違い、国が違い、人そのものが違うなかでの点数比較は、当然そのバラツキの許容誤差を考えに入れなければ実際的ではないと思います。この試験条件の差を点数の1〜2%分だけ許容誤差として考慮するならば、点数の低下変化分は事実あるにしても、殆どバラツキの範囲内に入ってしまい、「間違いなく学力低下がある」と言い切る所まで行かないのではないでしょうか。
 事実「学力低下がある」と判断されて具体的な是正措置が必要となった場合でも、事は教育行政の根幹に関わる事です、もう少し間違いのない証拠を掴んでから、施策に踏み切っても遅くはないと思います。文科省が何故こんなに急いで方針転換に走るのか理解に苦しみます。
 第2の理由は、学力調査の点数で第1位を保つ事が、そんなに重要な事なのかという疑問です。「ゆとり教育」の狙ったものは学力よりもっと重要で緊急な事でなかったでしょうか。私の知っている5年生の担任教師の話ですが、5日制実施により授業時間が減った上に、更に総合学習にも時間を割かなければならず、普通教科に割ける時間が足らない、対策として教科書の内容は5年前に比べてレベルの高いものは省いてくれてあってページは薄くなっているが、それすら教えたくても教え切れていないのが実状であると言っていました。教育の現場は、「学力」よりもっと根本的な事で今困っているのではないでしょうか。点数の問題に戻りますが、最近読んだ或る現役校長の論評でも、この教えていなかった辺りの問題が出ているのだから子供が解けないのも当然で、点数が下がったのは頷けるといっています。要は、子供が習わなかった問題が出たので点数が悪かった、というだけの話ではないでしょうか。「ゆとり教育」の重要性は、多少試験の点数が下がったからと言って、それなら止めようかと言えるほど軽々しいものではない筈です。完全5日制が施行され、その副産物として「おちこぼれ」とか「不登校」・「いじめ」が増加し深刻化してきました。「ゆとり教育」はこの難問題解決のために出て来たものであり、子供達を過密な詰め込み授業の重圧から解放してやらなくては、自立心のある、明るい、健全な子供は育たないという、思い切った政策的大転換ではなかったでしょうか。この事を忘れて、不確かな点数比較に拘って、また元にに戻そうかなどと考えるのは、余りにも朝令暮改に過ぎるのではないかと思います。教育現場の混乱が目に見えて来ます。もし見直しが必要あるとするなら、「ゆとり教育」より寧ろ、「総合学習実施要領」の中身ではないでしょうか。 会員 保坂達二